2019年 年頭所感~最後の平成を迎えて

㊗新年、明けましておめでとうございます㊗

旧年中は、大変お世話になりました。

この年齢で、さらに新しい気付きをいただいた旧年であったと感じております。

さて、少々、年頭所感を綴らせていただきます。

写真は、昨年終盤に視察した山形県鶴岡市バイオサイエンスパークで出会った「青いドレス」です。いま、日本の大きな課題である「地方創生を象徴するドレスである」という理由をご存知の方は多くないと思います。

このドレスの名は「QMONOS」と言います。スパイバー社という地方のベンチャー企業が開発した、この世に一着しかないドレスです。軽くて強いそうです。

じつは、このドレス、人工の蜘蛛の糸でできているのです。NASAや米国陸軍でさえ、ずっと研究してきて開発できなかった新素材です。強くて軽い未来のマテリアル。

日本の、鶴岡市で生まれたベンチャー企業のスパイバー社は、この蜘蛛の糸を世界で初めて人工化に成功させ量産化にこぎつけた企業なのです。NASAにもできなかったことを、この地方企業がやってしまいました。スパイバー社には、すでに二百数十億円の資金が集まっています。多くの有名企業が投資したがっています。

近い将来、石油製品やアニマル・マテリアル(皮革製品等)などのように地球上のものを破壊することなく開発できる新素材が求められることは必然でしょう。この人工の蜘蛛の糸は、その代替素材になり得るばかりでなく、強くて軽いという特長を備えているのです。

こんな凄い素材を開発したのが、山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所出身の関山和秀社長なのです。関山社長がこの人工の蜘蛛の糸の開発を思い立ったのは大学4年生のこと。彼は今でも鶴岡市に本社を構えています。だから、世界中が鶴岡市に注目し、私たちを含めた世界中の人たちが鶴岡市に足を運びます。アクセスを試みます。

昨年末、観光産業とは無縁なこの企業が鶴岡市を地方創生のトップ・ランナーにしてしまった事実を知りました。私の心の奥底に衝撃が走りました。

この企業の開発を支援したのが慶応大学先端生命科学研究所なのです。同研究所は「イノベーションの揺りかご」と呼ばれています。同研究所もまた、世界最新鋭のメタボローム測定器を50台も備える世界有数の研究所なのです。鶴岡市には、このほかにも世界有数の企業が複数あります。

ここで、同研究所所長の冨田勝教授のお話を引用します。「東京という都会よりも、どこの都市よりも、この鶴岡市に優れたものがなければならないと思った」とお話しされました。「都会が地方よりも上であるという考え方の人間に地方創生を語る資格などない」とおっしゃっているように聞こえました。最初は都会にケンカ売っているのかと思いましたが、冨田先生はこれからの時代にとってとても大切なことを私たち訪問者に伝えておられたのでした。同先生曰く「優等生にイノベーションなど興せない」とも。

私は今でも旅館や旅館経営者が地方創生の担い手になるという考えを持ち続けています。しかし、今のままの旅館の商品力では日本全土が、そして世界中が注目するレベルとは言えないと感じた旧年末でした。

旅館にはいま、イノベーションが必要です。
今年はもっと本質を探り、既成概念に流されない一年にしたいと思います。

昨年末まで迷っていたこと。九州のDMCから社員研修の依頼をいただいていたり、某大学からリレー式講師のオファーをいただいていますが、どれも積極的にお引き受けすることにしました。旅館業界の外から旅館経営に必要なエスプリを持ち帰る役目を担うべく、観光経済新聞社を飛び出して十数年、これからも信念を変えずに突き進みます。

皆様の叱咤激励、ご教授とご支援、ご理解の上に成り立っている弊社です。本年も引き続き、よろしくお願い申し上げます。

みんなで観光産業の「青いドレス」を創造しましょう!

合同会社宿のミカタプロジェクト 代表社員 永本 浩司 拝