【宿のミカタ・コラム】今更ながら役職定年制度を考えてみた

役職定年について、最近、想うこと。

以前、某旅行会社の社長と議論をしたこと。「55歳で役職定年なんて、会社にとってマイナスではないですか?」というテーマでした。旅行会社がどんどん業務縮小、体質改善を迫られていた時代、私はその会社の顧問を仰せつかっていました。

その時の会社の労務規程は「55歳を迎えたときに取締役に届いていない部長以下は、平社員扱いとなり、定年まで給与カットで働くことができる」という内容でした。これまで部下だった者の下で、残りの会社人生を過ごせということです。私には当時、地獄絵に感じました。
この労務規程では50歳ぐらいになると「どうも俺の出世は役員までは届かないだろう」と決め込み、50歳前ぐらいから転職を探り始めてしまう。これでは職場のモチベーションなど上がるはずもないと考えました。当時の私は。。。

しかし、最近、旅館の経営支援を続けていて、特に想うこと。これは55歳以上ぐらいの古株、幹部社員の弊害です。

私は釣りが趣味なのですが、以前、某釣り仲間の先輩に言われたことがあります。「まあ、55歳頃から新しい釣りや仕掛けを覚えるのがおっくうになって、同じ釣りばかりをやるようになるなあ」と。

確かに、55歳ぐらいからエイヤーッと気合を入れなければ、新しいことにチャレンジし難くなります。私の場合、57歳で氣空術という武術を習い始めましたが(笑)

これを会社に置き換えると「55歳まで雇われていて役員にまで昇格していない人は、新しい発想が浮かばず、新たなチャレンジがし難い人材だろうから、定年まで働いていても良いが、一線からは外れていただく」という会社判断になります。

最近、少しずつ、まんざらでもないと実感することが多くなってきました。

公務員は別としても、民間企業であれば、いくつになってもバイタリティを維持し、仕事を精力的にやる人は55歳ぐらいまでに起業しているだろうと。
55歳までに役員にもなれず、起業もできない人は残りの人生、できるだけ組織にしがみついていたいと思っていると取られても仕方ないのかもしれません。むしろ、幹部のままでは組織における下の世代のモチベーションや発想力を妨げる可能性のほうが大きいような気がしています。

特にインターネットが主役で、昭和の時代の経験則が邪魔をしかねない時代。決して乱暴な経営戦略ではなく、旅館も「役職定年」のような制度を、そろそろ考える必要がある気がしています。

2019年5月15日 宿のミカタプロジェクト代表 永本浩司