リエンジニアリングを急げ
2020年の出生率が大きく低下しているそうだ。
これだけ外出を自粛され、密が許されず、マスクにより恋愛接触にハードルを掛けられているわけだから当然であろう。婚活の機会も薄れ、オンライン飲み会では飲み会後の「ロマンチック!?」なチャンスもない。
「恋愛機会が少なくなった悲しい時代」という意味だけでなく、これは後々の世界経済に大きな影響を及ぼす話なのだ。
第一次ベビーブーマー(団塊世代、1947〜1949年生まれが中心)が高度経済成長期を生んだと言われる。そして、第二次ベビーブーマー(団塊ジュニア、1970〜1975年)は、バブル経済崩壊に晒され、結婚適齢期の将来不安や女性の社会進出などが影響し、第三次ベビーブームを起こせていないことから少子高齢化が加速したと言われている。
ここに恐ろしい数値があって、第一次ベビーブームの年間出生者が約269万6000人、第二次ベビーブームの年間出生者は190万人超だそうで、2020年9月に発表された年間出生者数は86万5000人。予測では次年度の出生者数は80万人を切るそうだ。この80万人を切る数字は2030年に想定されていた数値である。その差はなんと3分の1規模に縮小したことになる。
新型コロナウイルスによるパンデミックが、時間を10年も早めてしまったようだ。
人口が経済活動に大きな影響を与えることは、中国やインド、インドネシアなど日本よりも圧倒的に人口が多い国が名目G D P世界第3位の日本を脅かす存在(2位の中国にはとっくに抜かれ、インドが目前の5位、インドネシアも16位)になっていることでも明らかだが、第一次ベビーブームと今を比較すると、既に3分の1の出生者数になっているわけで、日本国内の経済活動は高度経済成長時に比べると、とんでもなくビジネスチャンスが減少しているという推論が成り立ちそうで、怖さを感じずにはいられない。
こうしたビジネスチャンスや需要の減退を補おうとインバウンド(ウエルカムプラン21=訪日外国人観光客倍増計画)誘致が1996年に始まり、2020年に4000万人を超えるインバウンドによる経済効果まで積み上げるはずだったのが、新型コロナウイルスによるパンデミックで一気にゼロ近くになってしまったことを直視して事業戦略を再構築しなければならない。
IT社会が本格化した1995年から2020年までの四半世紀を「失われた四半世紀」と嘆く旅行業界関係者もいるが、日本経済全体を俯瞰しても、今後、どのような業種が姿を消し、どのような業種が生き残るか、という時代に突入することは明白だ。
最近、政府系の研究機関やプロジェクトチームからポスト・コロナ時代のツーリズムについてのヒヤリングの申し込みが頻発しているが、その際、後ろ向きの話をしなければならないことがとても辛い。
私たち観光産業にも、リエンジニアリング(再構築)が求められている。
2021年2月6日 宿のミカタプロジェクト代表 永本浩司